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パール・スチュアートは早くに母を亡くし、父親であるエルトン・スチュアートと二人きりで暮らしていた。夜な夜な家を追い出され、その身体で稼ぐ事を強要されているようなサイクルを”暮らしている”と呼べるかどうかは疑わしいが。

「……、ふう」

月の光が、彼女の吐いた紫煙を照らし出す。

彼女と同じように虚ろな眼で路地裏に佇む少女たちも、大抵は似たような身の上だ。

かつん、と靴音が響くと、少女達は揃って顔を上げる。こんな通りを訪れるのは、この場所について知っている”買い手”くらいのものだからだ。通りに踏み入れた男に少女達は群がり、我先にと手を伸ばす。パールはそれを遠くから退屈そうに眺め、再び紫煙をくゆらせる。

少女たちの内からひとりが男に手を取られ路地裏から消えていくと、彼女たちは溜め息交じりに元の位置に戻る。そんな出来事が時折起こり、路地裏の少女たちはその数を減らしていった。その内パールにも”買い手”があり、彼女は手を取られて夜の街へと消えていった。

パールが自宅に戻ったのは、明け方の事だった。

リビングではエルトンがソファの上で横になっていて、ぐうぐうといびきをかいている。彼女は懐からドル札を何枚か取り出し、彼のそばにあるテーブルの上に置いた。今日の稼ぎだ。テーブルの上に無造作に転がる酒瓶の数を見て、この札束もすぐに父の腹の中に消えるのだとパールは理解する。

「……、くだらない」

パールは肩を落として自室に閉じこもる。そのままリビングにいたのでは、実の父親を殺してしまいかねないと思ったからだ。

「そんなこと、できやしないのに」

自室のドアに背を預け、ふと浮かんだそんな考えを自分で嘲笑う。胸の中に空虚さを抱えながら、パールはベッドに飛び込んだ。通うべき学校のない彼女にとって、早朝こそが一日の終わりであった。


「わざわざ足運んでもらって悪いけど、女には売らないって決めてんだ」